平地さん (佐賀大学 経済学部教授) 『日本経済をどう見るか〜働く者の立場から』
「働き方改革は、働く者からすると長時間労働の是正や同一労働・同一賃金の均等待遇。 資本側
や経営者の要求は、裁量労働制や高度プロフェッショナル制度など、長時間労働を野放しのモノ。
長時間労働が拡大する可能性があり、高プロも認められない。 安倍総理の内需拡大は口先だけ。
実際は働く者にとって、問題がある事を実行している。
今年8月に総務省の自治体戦略構想が出され、2040年までに自治体職員を半分にするという。
人口減少で今の半数で支える必要があるとした。 20年後に半分にするには、新規採用をこれから
一切とらないと半分になる。 もうひとつは首を切って、新採を今の半分入れる方法。 現実には、真
ん中をとる方法だが、この提言をどう考えるか。 これは自治体だけに限らない、全企業に及ぶ話な
んだという事です。 日本経済をどう見るか、キーワードは少子高齢化で大きな問題。
アベノミクスはうまくいかなかった。 消費の大半は私たち働く者の賃金から出される、この20年間
で労働分配率は低下してきた。 低下すると経済全体が縮む。 収入を貯蓄に回すか消費に回すか。
消費に回すのを限界消費傾向と言います。 労働分配率を上げると倍にもなるが、アベノミクスは労
働分配率を下げながら、デフレから景気を上げようとしたので経済成長しない。 労働者を解雇しや
すい制度が議論されていたが、人の首を切るより人手不足が問題になってきている。
少子高齢化の問題で、需要がない所をいかに開拓するかが、労働力の供給制約をいかに克服する
かに変わった。 労働力が足りないと、その為に外国人労働力の問題がある。 高齢者雇用で70歳
まで働きなさいと、今の年寄りは昔より10歳若いと、安倍政権は高齢者雇用も増やそうとしている。
私たちから搾取を強化する方法、
九州大学名誉教授・小島さんの経済学の中でも言われている。
企業とは最大に利益を求める組織体。 その利益の根源に労働がある。
40年後には私たちの仕事の半分は無くなると言われる。 弁護士・医者・学者はAI、人工知能が進
むと無くなると言われるが、この3つは経済的影響が少ないので、ホワイトカラーの事務屋に銀行業
務や製造現場の方に使われる。 現在はスマホで色々と調べられ、仕事の密度は昔に比べ上がって
いる割には、賃金は下がっている現実。 私たちに突き付けらている課題なんだ。 30年前は世界と
の比較で日本は平等だと言われたが、この20年で日本の相対的貧困層は2千万人を超えている。
6人にひとりが相対的貧困にあり、一人親世帯に多い。 若者の雇用も正社員は1/3もいない。
正社員と言っても定期昇給やボーナスのどちらかが欠けていて、本来の正社員とは違うのが蔓延し
ている。 格差問題、貧富の格差は努力とは無関係で、社会の選び方の問題。 スウェーデンやノル
ウェーは社会民主主義国家で、社会民主党を中心とした政治で、GDP成長率が安定していて高い。
みんなの労働分配率が高いので成長する。 労働組合の組織率は9割で、労働協約は全ての労働
者に適用されている。 社会的福祉国家。 労働組合は連帯の組織、人々と支え合う関係の社会。
社会民主主義の政党が担う国は、貧富の格差も小さく成長率も高く、経済と両立する。 フランスや
スペインは労働組合の組織率が低く10%くらいだが、労働協約は100%適用で労働組合の社会的
影響が高い。 フランスは同族経営の企業が多く、企業内で組合活動ができにくい。 組合費のチェ
ックオフを歴史的にしていないが’80年代に社会党政権ができて変わり、10%とは活動家の割合。
10人に1人が熱心な組合活動をしており、交渉で決まった内容の労働協約が全ての労働者に適用
される。 フランスのストライキやデモは、組合員以外の労働者も参加するので大規模であり、実際
には大きな組織と言える。 日本では今後、第4次産業革命でいろんな合理化の手段が全ての職場
に入ってくるので、今後いろんな大きな問題になる。 労働者の首を切り、賃金を下げる悪循環でもっ
と悪化する。 総務省の2040年構想の半分とは自治体だけではない。 日本でも社会のあり方をひ
っくり返す必要がある。 賃金を引き上げて社会保障の引き上げと、労働分配率を変える。 この20
年の悪い状況から脱却する必要がある。」
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