小島さん 九州大学名誉教授・労働大学講師 『資本主義のしくみ』
「労働者がもらう賃金と実際の働く価値はイコールではない。 労働者は賃金でもらっている以上の価値を働くことで、
うみだしているのが実態。 資本家の儲けを明らかにする場合、この差額が資本家の儲けになっている。
封建社会は農民が中心で農業中心。 年貢米として半分は殿様にピンハネされ、農民の懐に残るのはせいぜい半分。
殿様はなにもやっていない。 支配しているというだけで五公五民といった封建的搾取をされ、農民は貧しかった。
こういう話は新聞やマスコミは書かない。 資本主義の儲けのおおもとは、労働者がつくりだしながら、労働者に返
ってきていないということで、年貢米と同じことが資本主義社会の儲けになっていく。 労働者は現実にピンハネされ
資本家の儲けはうまれている。 資本主義の基本的しくみは、儲け目当ての社会。
できる限り儲けを多くしようと、労働者からのピンハネを多くしようとする資本家と、労働者は対立関係にある。
労働組合はピンハネ分を取り戻そうと、賃金闘争をする。 階級をちゃんと意識し、ピンハネを認識することから労働
運動がはじまる。 労働者は資本主義のしくみを知らないといけない。
資本家ができるだけ儲けを多くしようとする方法は、 労働時間の延長。 働いている時間の半分、4時間が賃金で
8時間のうち4時間はピンハネされる時間。 できるだけ資本家は長くしようとする。 資本主義のはじめ頃は、1日
12〜14時間労働であったが、労働者は時間短縮の運動をやって8時間とした。
8時間以上は残業手当となるが、働いた分は全部払われていない。 日本の時間外手当25%増しは国際的に低い、
割増は50%が常識。 休日出勤はヨーロッパ社会だと100%増し。 非常に安い賃金で残業させられているのが
日本の労働者の現実。
資本家は労働者の数を増やすよりも、長く働かせるのが安上がりという認識。 残業手当も満足に出さず、ただ
働き・サービス残業が、やたらと多いのが日本。
決められた時間に、どれだけ働くか。 例えば1分間に5回動かしていたのを、10回と倍にすることを労働強化という。
賃金が同じだとすると、労働強化で働かせ作らせた分は資本家の儲けとなる。 機械の流れを早くさせようとする。
昔、3日でやっていた仕事を1日でとなり、労働者に過労がたまっていき過労死や自殺がうまれる。
資本家は労働賃金の切り下げで儲けを増やそうとする。 できるだけ下げようと民間も公務員も不況を口実に下げ
ようとする。 いろんな形の賃下げの方法がある。 雇用の多様化という名で、臨時やパート・アルバイト派遣労働者
などの非正規労働者が増やされ、同じ仕事をしながら安い賃金で働かせ、非正規労働者をできるだけ増やそうとする。
派遣労働は炭坑などで人権無視で働かせ、派遣禁止になった。 資本家は派遣を認めさせ、どんどん増やしてい
った。 今や民間だけでなく公務員でも3割が非正規。 下請けに落としたり民営化と言って民間委託する狙いは、
形を変えて賃金を切り下げる方法。 いろんな形で賃下げを巧妙にやっていくのが資本主義社会。
資本家は資本の蓄積で資本を大きくしていく。 企業が大きくなっても労働者の状態はよくならない。
資本家は生産手段を増やす事に投資をして、労働者を雇う方にはそそがない。 技術革新でオートメーションが
進み労働者は減る。 資本が大きくなると残念ながら失業者は減らない、逆に増えていく。
かつて日本の失業者は40〜50万人。 完全失業者数が1975年頃には100万人くらいに増えて、その後も
ジリジリ増えて、今日では約300万人となってしまっている。 資本家が儲けを確保していくカラクリ。
資本主義では失業は不可避性がある。 資本家にとって、常に職を求める人がいるという事は有利で、働いて
いる人も賃金を上げにくい。 労働条件をよくすることが難しくなる。 資本家は失業者を無くさない。
こうして資本主義は発展していく。 資本主義は失業者を生み出し、たえず労働条件が抑えられ悪化する。
労働者の健康も蝕まれ、これを労働者の窮乏化という。 社会保障が悪化し、老後は惨憺たるものとなっていく。
資本主義が発展し労働者の生活は不安定になっている。 資本主義の矛盾はいろんなところに現れる。
恐慌や不況は矛盾の現れで、繰り返しがある。 過剰生産がおおもとで恐慌や不況が起こる。
こうした現象は、資本家が儲け目当てで、できるだけ生産を増やしていくが、一方で労働者の賃金を減らして
人減らしをする。 モノは売れない、こうして起こるのが恐慌であり、不況であり繰り返し起こる。
資本主義の業病、死ななければ治らない。 不況になると首切りし、労働者を減らすのが資本主義のやり方。
外国に工場を移しても儲けようと資本家はする。 過剰生産を減らし、消費をいかに増やしていくか、やらないと
不況はよくならない。 国内の購買力を増やしていかないといけない。 これを内需という、6割が個人消費。
そのためには労働時間を短くして、雇用を増やし賃金を上げる。 良くなれば多く買おうとしますから、購買力が
増える。 さらに、病気や老後に対して社会保障を良くするのが最もいい道だ。 人を減らしたり賃金を下げるのは
一時しのぎで、不況はよくならない。
私たちは、よく考え労働運動を発展させていく必要がある。 労働講座は働く者の武器になる。
働く者の自らの状態、自らの課題を知る事になっていく。 団結し勝ちとっていくことで、労働者自身の生活をよく
して、日本経済をよくする事にもつながる。」
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