第5期労働講座 第5回
                

日 時 2016年5月19日(木)18:00〜19:30
場 所 長崎地区労会館・2F大会議室


主 催 長崎地区労 
平地さん(佐賀大学 経済学部教授) 『不安定化する資本主義―新しい社会への展望―』
「パナマ文書というもので約260万件の企業や個人が暴露された。 基本的に世界全体が金が余っている
 状態で実態がわかりにくいが推計700兆円の節税をしている。 毎年500兆円を富裕層や企業が税金を
 払わずにいると言われ、日本の国民総生産・GDPは500兆円あり、働いて冨を生み出すくらいの額が節
 税されている。 これが10年経つと5千兆円にもなり、世界全体のGDPと同じ数字になる。 
 フランスの経済学者トマ・ピケティは、21世紀の資本論で世界の税務資料統計を集めた。 先進国では、
 お金持ちの資産総額がGDPの5〜7倍くらいあるのが今の社会の現実。 格差とは労働者と労働者での
 内部の格差を言われるが、富裕層(資本家)と働いている人の格差とは相当なものでかなりの差がある。


 アベノミクスの経済政策はうまくいきそうな幻想を振りまいている。 成長戦略は新古典派の理論で、労働
 者の首を切りやすくし、ホワイトカラーエグゼンプション・残業代を払わないなどで景気をよくする考え方。 
 異次元の金融緩和でマイナス金利の政策を打ち出し、利子が下がると借りやすくなるだろうとしたが、うま
 くいかなかった。 実態経済が委縮して設備投資など、みんなが借りようとしない状態。 金利が低下した
 ので住宅ローンの借り換えは増えたが、新たに住宅を買おうとはなっていない。 銀行の労働組合は今年
 春闘要求をやめたのは、金利が下がり収益率が減っているから。 GDPの成長率を見ても成長していない。


 実体経済は不況なのに金利面だけやっても実体は何も変わっていない状況。 景気が悪い時は金融政策
 はきかない。 財政政策では、公共工事などで景気浮揚させようにも日本の赤字財政1兆円では限界があ
 る。 将来が不安で消費に回っていないと、社会そのものが成長しない。 社会全体で支え、労働分配率が
 高まると成長する。 賃上げで内需拡大とは根拠があり、景気も良くなるが抵抗勢力は企業の経営者で自
 分の利益が減るから。 これまで資本家は賃上げに抵抗して労働組合を弱くしようとしてきた。 社会の成
 長・発展は労働組合が機能をしっかり発揮することによって、社会も成長しプラスになっていく。
 

 アメリカやイギリスなどは新自由主義的な福祉国家で貧富の格差が大きい。 その対極がスウェーデンや
 フィンランドなど社会民主主義的な福祉国家であり、平等な国ほど社会は発展する。 働かないとかいうと
 そうでもない。 GDPも同じ成長率であり、問題は私たちがどちらの社会を目指すかという事。 不況で、
 中小零細は大変で経営者は公務員の賃金を言うが、ケンカのポイントはそこではない。 格差は政策に左
 右され、富裕層だけがよくなった社会は直す必要がある。 アベノミクスの実態は実質賃金は上がっていな
 い、言葉だけで中身がない。 


 野党が出していた時には反対していたので、同一労働・同一賃金とは非正規に合わせる印象が強い。 
 原動力は労働組合にあり、フランスでは労組の組織率は10%と低いが労働協約の適用が、同じ産業なら
 組合以外の人にも拡大し適用される。 スウェーデンやフィンランドの組織率は80%で労働協約の適用も
 高い。 日本は組織率も低いが労働協約の適用率はもっと低い。 スウェーデンやフィンランドは労働組合
 が強く、福祉国家という面が強い。 労働組合を強くする事が、私たちの社会を良くする事に繋がっていく。」




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