平地さん 佐賀大学 経済学部教授 『賃金論と賃金闘争―賃金を通して社会のあり方を考える―』
「賃金はちんきんでなく、なぜちんぎんと言うのか。 江戸時代は西日本と東日本では通貨が違っていた。
江戸はゴールドで金の価値、関西は銀が中心の経済圏。 1871年に通貨制度を統一して円ができた。
西洋の書物を訳した時に賃金となり、貨幣法ができて金に統一され賃銀が賃金に変わった。
江戸時代は賃金という考えはなかった。 米を作り、半分は領主に治めて支配階級が搾取していた。
明治以降、生産体系が作られ、資本主義社会も基本は同じで、搾取の仕方が巧妙になってきている。
今年の4月に消費税が増税され、消費の割合が減ると全体が減るとなる。 消費に回せないと国内総
生産や投資も伸びない。 景気を良くするには、限界消費を高くすれば簡単に上がる。 実は経済を良
くするには消費するようにすればいい。 労働分配率の事で企業所得が減る、つまり賃金が上がると
効果がある。 賃金を上げる事で景気を良くするのは間違いではない。 異次元の金融緩和で投資拡
大のはずが、余った金は国内投資は拡大せず海外のマネーゲームへ行ってるのがこの2年間の状況。
安倍政権は経営者の意向をほとんど聞く政策であり、企業は利潤が減るので賃金は増やしたくない。
利潤を上げるには賃金を減らせばいいので、企業は減らそうとする。 経営としては間違った行動では
ない。 経団連・経営者団体は労働法制の改正、私たちから見ると改悪してきた。 派遣労働者法は、
戦前から禁止され、いくつかの業種のみで合理性があった。 1995年にひっくり返り、コレとコレ以外
は全部派遣でいいですよとなってしまった。 製造業など非正規労働者を増やして、派遣村ができた。
総額人件費の抑制とは、企業の人件費を減らし、企業は社会保障も出したくない。 21世紀に入り賃金
は下がり続け、解雇もして企業の利潤が増えたが、売上げは減っていった。 結局、最初に問題があり、
資本家を擁護する政策。 資本家の賃金論は新古典派の経済学の考え方で、賃金が高いと企業は人を
採用しないという考え方。 需要と供給で賃金も雇用も決まる考え。 労働組合が大挙しておしかけ均衡を
破ろうとするので、労組の存在は新古典派から見ると、均衡を乱す邪魔な存在となる。 維新の会は最低
賃金の廃止を言った。 バックにいたのは竹中平蔵さんで、新古典派の考えでは労組や最賃は敵となる。
実は賃金が上がると雇用が増える。 社会全体を見ていると、そういう結論になる、これが正しい。 目先
を言う新古典派はミクロで見る。 賃金を下げたり首を切ると、商店街の店員が近くで暮らしていたら商店
街の売り上げは落ちて悪循環になる。 経営者としては正しい判断でも全体としては悪くなる、これを合成
の誤謬(ごびゅう)と言う、1人ひとりの選択は良くても、みんながやると間違った結果になるという事。
賃金が上がると消費が増え全体が上がるが、経営者はそう見ないし自分だけ利益を減らす事はできない。
賃金を下げる事しかできないので、労働者は労働組合を職場に作って闘い、みんなで上げていくしかない。
みんなで上げないと上がっていかない。 かつての春闘のスローガンは暗い夜道を手を繋いで歩けば怖く
ない。 みんなで上げるのが春闘の考え方。 かつて経営者も世間の相場に合わせ上げたのが、日本の高
度経済成長。 資本家の視野は狭く、労働者の視野は広い。 賃金がなぜ上がらないのか。 大きな原因
は労働法制の改悪で労働者が分断されたから。 正規・非正規の克服と同一労働、同一賃金などが必要。
うまくいっている社会には2種類ある。 アメリカのような新自由主義で労働者の賃金を下げて社会保障を
しない国家。 ただし相対的貧困率は高く、格差を見込んだ社会。 もうひとつはスウェーデンなどで、平等
で経済発展するのは社会民主主義の国。 賃金と社会保障をしながら全体を上げていく。 消費税は社会
保障を充実させる使い方。 貯蓄するのは先が不安だからで、保障すると比較的消費に向かいます。
消費税が上がり企業が大変なので、賃金闘争を抑える動きがある組合があるが、企業は利益は減っていな
い。 私たちの実質賃金は下がるので、消費税+2%は要求していかないといけない。」
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