第2期・労働講座 第6回


日 時 2013年4月19日(木)18:00〜19:30
場 所 長崎地区労働福祉会館・2F大会議室


主 催 長崎地区労
第2期・労働講座6
平地さん (佐賀大学教授・労働大学講師) 『働く者を取り巻く現状と労働組合の課題』
「世界の経済はどうなっているか。 企業や富裕層の余剰金がマネーゲームへ。 結果リーマンショックで、その後の不況
 が欧州の財政危機の背景になっている。 私たちの賃金が減って、資本家の利潤が増えた構図が今も続いている。
 投資が実物経済へ投資にならず、株式に国債・先物など設備でなく証券への投資へ回るのが今日の基本的構造です。
 アベノミクスは何をもたらすか。 みんなが物価が上がると思えば消費する、消費すれば経済成長するという理屈。
 はたしてそうか。 金融政策で一番効くのは、ブレーキをかけるべきだったというのが専門家の議論。
 

 金融政策が政治に左右され、ブレーキが効かなくなる。 今のところ問題なしなのでいいように感じるが、今後アベノミクス
 はブレーキがかけられないのが懸念される。 日銀の金融緩和でマネーゲームになり、外国の投資家の対象になった時に
 ギリシャやスペインのように、財政的に不安定になる可能性がある。 金融緩和は将来に危なっかしい側面をもつ。 
 経済成長と言いながら、新自由主義的で誰のための成長戦略か。 産業競争力会議の構成メンバーは、いわゆる経営者
 団体のメンバー。 労働者の首を切らないと経済成長できないと資本家は考え、首を切りやすくする。 改正した労働契約法
 は現実に有期労働契約を固定化する。 5年で無期雇用になるので企業防衛の為、最初から3年で一部の企業は行っている。
 

 新自由主義的福祉国家はアメリカ・カナダで、GDPは高いが貧困格差が大きい。 家族主義的福祉国家はドイツ・フランス、
 財政的に苦しいが相対的貧困率は低い。 社会民主主義的福祉国家はフィンランド・スウェーデンであり、社会的支出は高
 いが、相対的貧困率が最も低い。 1929年の世界恐慌以降、世界は国家が経済に介入する社会に変わった。
 労組の課題。 私の父は全逓(現在の郵産ユニオンやJP労組)で労働組合は掃除と同じで、しなくてもどうにかなるが、しだ
 すとやり続けなくてはいけないと言っていた。 掃除の大変さ、継続の大変さ、実態交流と学習が労組の原点。


 働く者の実際の生活と働かせ方に根拠がある。 いろんな職場の不満がある、そういう事に目を向けるのが大事。
 自分の職場だけでは見えない。 掃除で言うと散らかりが同じ部屋では見えない。 他の部屋、違う職場を通して自分の職場
 を見るのが大事。 交流も姿勢の問題、勉強し続けるのは大事で、学習会を通じて学ばなければならない。 
 今の労働組合にとって必要なのは、社会的労働運動。 正規・非正規の雇用分断が進む中で、広い視野が必要と感じる。
 成長戦略の中身は私たちの生活に直接的にかかわる。 注意深く見て、分析していくことが必要。


 アベノミクスがうまくいく可能性のポイントはいろいろある。 経済成長・成長戦略・金融財政問題は、アメリカ的な労働者の首
 切りをして、資本主義らしい資本家らしい提言をすれば成長する。 
 働く者が犠牲になって当然だよね、という社会を作れば成功する。 首を切られてもみんなが文句を言わないなら、うまくいく。
 アベノミクスの成長戦略の中身は、労働者を犠牲にしたうえでの中身。


 経済成長とは、お金で換算し集計しただけで、お金に換算できないモノ、社会の豊さを計る別の基準があれば別のモノになる。
 私たちの計る尺度が数字しかない。 これまでの100年の経験は、資本主義にまかせていてはダメで、21世紀の新しい社会
 主義、昔のソ連とは違う新しい社会主義を模索している時代が現代の社会。」




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