大藪さん（フォトジャーナリスト）
『ビジュアル情報から見るジェンダー指数　過去最低の日本社会と性暴力の関係』
「１９９９年８月９日にアメリカで新聞社の専属フォトグラファーをしていた時に、性暴力の被害に遭いま
　した。　ゴルフの取材を一日中してて夜早く寝てると人影がある。　夢かなと逃げるんですけど捕まり
　ました。　体が凍り付き、助けてと呼んだつもりでも何の音もでていなかった。　死というモノを感じた。
　この夜に死んではいけないと、死なない為には男に従おうと、ひとつの選択をした。　
　犯人は３日後に捕まり、裁判所で懲役２０年を受けた。　当時のアメリカで前代未聞の判決。　
　

　当時のアメリカでは３～５年で、刑務所で態度がいいと早く出てくる。　加害者は同じ犯罪を繰り返す
　人が多い。　アメリカの加害者１人につき平均６０人被害者がいると言われ、加害者を野放しにして
　いる社会。　私自身、被害に遭うまで関係ないと思っていました。　安全な場所にいたし、飲みに行
　く事もなかった。　無関心さが、加害者を野放しの社会に加担していたと反省させられました。　
　違う州に引っ越し、違う新聞社で写真家として働きました。　私も気がついたら鬱状態になり大変な
　思い。　感情が無くなりヘルプが必要だとわからなかった。　中毒のように仕事ばっかり、家に帰り
　

　たくない。　家に帰り、隣のドアの音を聞くだけで悪夢がでる。　取材でスラム街の黒人教会に行き
　話をしました。　人はそういう体験があるからこそ、ビターにもなれ、憎しみや怒りを抱えながら生き
　ていく、ベターになるより良く生きる選択もあると言われ、それからは牧師が私のカウンセラー。
　加害者に手紙を書いたらどうだと言う。　この人、何言ってんのと思った。　私は裁判で決着が着い
　たレアなケースで、相手がどこにいるかわかる。　でも、やっぱり怖い。　あなたが、心なしにした事
　で、どれだけ傷つけられたかワカラナイでしょと、でもいつか許す事ができたいいなと、悩んで投函

　した。　感情の無かった私が笑い出し、いろんな感情が戻り、あの手紙を書いて、許す立場にいるん
　だと、見えない恐怖から解放された。　上の立場にいることが転換に繋がって元気が出ました。　非
　常に楽になった。　私は写真家ですから、元気になれば行動に移せる。　性被害者の方で、実名で
　語る人がいれば、私がカメラで写して取材をするプロジェクト。　３００人くらいからメールが来て、１
　人ひとりメールで１年くらい信頼関係を整ったら会いに行く。　アメリカは広いので飛行機で５時間と
　かかかる。　８０人くらい取材しました。　仲がよかった仲間たちもポロポロと話をしてくれた。　彼女

　たちの苦しみをまったく知らなかった。　２００１年当時のアメリカでは、性暴力被害者の実名はタブ
　ー視されていた。　働いていた新聞社でも却下された。　被害者はしゃべってはいけない存在なの
　か。　汚れた恥ずかしい存在なのかと。　恥ずべきは被害者であって加害者ではない。　日本でも
　だいだい８５％の被害者が顔見知りから。　だからこそ警察への通報が難しい。　性暴力被害で、
　被害者は精神障害で鬱になり、職についても３ヵ月持たないで生活保護の流れ。　多重人格やら
　精神障害を持っている人もいます。　子どもの頃から性虐待を受けている人は、いろんな人格が出

　てくる。　拒食になり力がなく寝てるしかない人や、自傷行為を繰り返す人も多い。　虐待には性暴
　力が入っていて、いじめの中にもたくさん隠れています。　再婚した親からの虐待。　いじめを苦に
　した自殺は性暴力が入っています。　加害者は外ではイイ人で、そんな事していないと平気で言う。
　カリフォルニア州の事例で、性暴力についての社会的コスト、２０１２年の統計レポート。
　９４万８千人が性暴力にあった。　６６％が女性で、３４％が男性。　レイプが２４％、チカンやセクハ
　ラの統計が４３％。　経済ロス約９００億円が１年間での社会的コスト。　加害者は衣食住が保障さ
　

　れ、受刑者１人養うのに税金で３５０万円かかる。　被害者に払うのはゼロ。　特に日本はそうです
　よ。　カウンセリングも自分で探すしかない。　性暴力とは支配欲。　チカンは普通のサラリーマン
　がしています。　どこかでストレスを感じてる人が起こす事が多い。　人権感覚、相手を尊重する事
　が抜けている。　日本では年間１６万人が人工中絶で、生まれる事が許されなかった。　中絶の年
　齢は２０～２４歳の女性が一番多く、３万９千人。　２０歳未満が１万４千人で、１５歳未満が毎年２
　００人いた。　将来の納税者が消えているのに問題視されていない。　本当に少子化なら、性教育
　

　でなく人を教育していく必要がある。　ＪＫは売り物なんかじゃないという内閣府のＣＭ。　この女子
　高生たちが悪い奴のよう。　高校生たちを買っている大人たちに声かけしないといけない。　日本
　で警察に行くと、立件できるかどうかで被害届けを出させない所が多い。　いろいろ言わせられて
　被害者は傷つき、泣き寝入り。　警察は被害届けを受け取るのが仕事です。　これで２次被害はだ
　いぶ減る。　聞く側になった時に、否定も何もせずに聞いてください、辛かったんだなと。　話してく
　れてありがとうと。　それだけ信頼してくれてるという事です。　被害者を責めるのは、やめないとい

　けない。　女性の貧困は深刻で、日本は離婚して母子家庭になると貧困になり、発展途上国と同じ。
　養育費を払わずに生活できるのは、この国だけ。　アメリカでは給料天引きで養育費が届くように
　なってます。　男だったらシッカリ責任を果たしてもらいましょう。　女性はいつも支配され仕える立
　場にあり、専業主婦というチョイスで、ガマンしている人もいる。　女性の価値は若くてかわいくない
　といけない風潮はどこから来ているのか。　自衛官募集のポスターで、なんで短いスカートの女子
　高生のイメージを使うのか。　これを見て釣られて入っていく人も問題ですけど。　女性の目で見て

　どう思うのか。　疑問に思わない人が多い。　なぜ、そういう風にモノ化するのか。　女子が商品化
　されている事に気が付いているでしょうか。　他人の趣味の為に性的な標的にされている。　日本
　に帰ってきて６年、伊藤詩織さんの勝利や、地道な活動で被害者の味方は確実に増えています。
　なぜ顔を出して実名で語るのか。　自分の体験や証言が意味があると思えると、人は強くなる。　
　日本では自分の権利を知らない、学ぶ事ができない。　人の為とか、自己犠牲の日本人が多い。　
　性暴力被害では、なぜそんな人と一緒にいたのとか、いつも被害者が攻められてきた。　注意し

　なさいでは性暴力は無くなりません。　言葉を変えていかないと。　東京の人権プラザで写真展を
　していて、メディアとの対話をします。　取材する側とされる側で、どうやって声かけしていいかワ
　カラナイ。　特別視されたくないので、普通の人として接してください。　人の心は複雑です。　
　ジェンダーの意識、女性も男性も小さい時から意識を培うのが大切。　声を上げたくても上げられ
　ない人の表現を、プロジェクトとしてやっています。　声を上げない選択があってもイイ。　だから
　といって放置される訳にはいかない。　視野に入れながら、#ＭｅＴｏｏとかフラワーデモをしていく
　必要がある。　被害者は毎日どこかで生活して、今も生きている。」

長崎県教職員組合　執行委員長
「学校の教員です。　心理学やカウンセリングも、そこそこ勉強してきました。　今日の講演は過酷な
　体験から何かを掴んで立ち直る、貴重な話でした。　日本社会が持つ、ある種独特の抑圧行動が
　ある。　さかのぼれば、明治時代から日本はへんな方向へ行き、敗戦で戦後民主主義が立ち上が
　った。　靖国法制化に反対し、立ち上げたヤスクニ共闘。　抑圧を懐かしむ戦前の亡霊が、日本の
　政権中枢を担っている。　巻き返し、今のこのような社会をひっくり返さないといけない。」