安田純平、シリアを語る
―戦争の真実とジャーナリストの責任―
日 時 2019年3月10日(日)14:00〜
場 所 長崎市平和会館ホール
入場料 1000円
主 催 市民運動ネットワーク長崎
言論の自由と知る権利を守る長崎市民の会
長崎マスコミ文化共闘会議(長崎マスコミ関係5社の労働組合)
市民運動ネットワーク長崎 事務局長
「3団体の共催で開催します。 8月9日を中心に、ピースウィークのイベントをやっています。 昨年、
常岡浩介さんを招いた講演会で、シリアで拘束された安田さんについて質問があり、2ヵ月後の10
月に解放された。 今回、長崎に来てもらい対談となりました。」
言論の自由と知る権利を守る長崎市民の会 会長
「安田さんや常岡さんが記者の仕事をする上で、政府がやっている事の方が間違っているのかどうか。
政府が認めた事だけの報道では奴隷と同じ。 昨日のさようなら原発長崎集会で、NHKの元ディ
レクター七沢さんも同じ事をおっしゃいました。 原発事故で30km圏内も誰か入って取材しないと
どうなっているかワカラナイ。 禁止されても入り、調べないといけない仕事。 市民に情報を提供
するジャーナリストの責任について、考える事ができると思います。」
常岡浩介さん (フリージャーナリスト/元NBC長崎放送 報道記者)
「安田くんとは捕まる直前までチャットでやりとりしていた。 2012年、取材でシリアに入り武装勢力に
捕まり、3年4ヵ月ぶりに解放された。 2014年までは私も取材で入れた。 その後は無事に出るの
が難しいと、BBCなどは現地人を使って取材する。 2015年、他の捕まった日本人も殺される状況。
日本ではシリアはイスラム国で、アメリカを敵視している報道だが、現地ではそうでもなかった。
アサド政権の恐怖政治から、自由を求め蜂起したが腐敗して自滅、イスラム国に吸収された。
誘拐された経緯もわからない中、日本政府に要求し、払えないと処刑されると声明を出し、国境なき
記者団が発表して日本中のTV新聞が報道した。 これがまったくウソで自称コンサルタントがブロー
カーと接触してつくり話を発表していた。 解放され帰って来るとかなり状況が違っていた。 海外で
記者が誘拐された時に外務省は外交なので、テロリストとの交渉は警察です。 CIAやMI6など諜
報機関が対応する。 日本は公安の外事3課がやるが、捕まっている間に派遣はしていない。 実
は金が支払われたとか、政府に迷惑をかけたとか言われてバッシングされているが、捜査機関はネ
ットサーフィンしかしていない。 海外で取材して海外メディアと付き合うと、世界中で危ない所に行
くのにダメだと言うのは日本以外ない。 今、日本の新聞を見ていると外務省の圧力で、世界の危
険地帯での報道や取材が減っている。 ロイターやCNNやBBCはそうでもない。 国連機関の日
本人や、国境なき医師団にNGOなどにも、日本政府がビザを出すのを妨害し、渡航の権利を制限
してきている。 ジャーナリストの役割、自分が行きたいから行って捕まって何が悪いか。 素晴ら
しい事や、使命を果たしているつもりはない。 ニュースはちゃんと伝えないといけないが、パンと
違い無くても困らない。 戦場になぜ行くのか、パン屋がパンを売るのに理由が必要なんですかと
しか言えない。 報道はファクト、事実をちゃんと流し、フェイクを流さないのが大事。 フェイクが
意図的に流され、あるメディアはデタラメを流し同業者を見ても、ヒドイのがイッパイいます。
どこかの政治グループが利用している。 ヒトラーはユダヤ人の陰謀論を流し、国民をある方向に
進めた。 ネットのフェイク情報は、組織的に社会をどれだけ破壊しているか。 世界の戦争にあ
るのは人権問題。 ヒトラーの支持も大衆。 大衆がフェイクを見破り、教養と理性を持たないと。
日本に戻ってきたら、旅券返納命令が出た。 パスポートを取り戻したい。」
安田純平さん (フリージャーナリスト/元信濃毎日新聞 記者)
「独裁が続きシリアの人は自由が欲しいと反政府デモが広がった。 反政府軍と政府軍、丘の上から
反政府軍がいる街中に砲撃を打ち込む。 一般人もいるとわかっている、空爆され上空にはヘリ。
ミサイルが飛んでいる音と着弾音。 戦車が入り近づいて爆発物を置き、RPG弾で反撃すると居場
所がバレる。 人が入って来ると撃ち合う。 シリアは人口の半分がイスラムのスンニ派が多い。
スンニ派の兵隊を出すと、反政府側もスンニ派を出し、丸ごと逃げちゃう。 シリア軍としても大部隊
投入ができない。 兵器は持っていても人は出せない。 政権崩壊後にイラクの武器庫からシリア
に流れた。 反政府軍はシリア軍から弾を買っている。 協力者が横流しで1発2ドルで買い、戦っ
ている。 反政府軍は資金も少なく長引くと厳しい。 戦っている所をイスラム国が反政府軍ばかり
攻撃して大きく3つどもえになった。 イスラム国は明確な賃金表もあり、ケガの保証もちゃんとや
っていた。 反政府軍はどんぶり勘定で適当。 難民は仕事もなく参加し、少年も入っている。
チュニジア・カザフスタンなど、いろんな国から参加している。 イスラム国は結婚制度もあり、国と
してやっていくビジョンがない反政府側に見せたら、ビックリしていた。 対戦車ミサイルもブラック
マーケットで買える。 行きたかったが入れなかった。 パレスチナやリビアから裏で流れ、1発1万
ドルとかする。 対戦車ミサイルでヘリも落とせる。 政府軍の基地を抑え、奪った物も多い。
トルコ側の国境に入り、スマホを使っているのを見られてスパイ容疑となった。 戦争をやっている
と双方に情報提供者がいる。 知らない人間が来たらスパイ容疑なんてしょっちゅう。 容疑をはら
せないと取材できない。 追い返すか、人質かスパイだと処刑する。 武器を持っていた人は処刑
された。 いろんな現地のブローカーが仲介役で商売にしようとする。 外務省に言うので毎月2千
万くれとか言ってくる。 日本政府が反応したと、対応していると思われたら金額が吊り上げられる。
イスラム国のフリをする奴もいて、交渉相手が本物なのか重要です。 反応がないと解放するので、
カナダも払わず相手にしなかった。 結局、金が取れなくて殺すのはアピールの時。 ヨーロッパの
人の映像がないのは交渉とは秘密、どこの国でも裏でする。 イスラム国も商売でしているので、
安倍首相がイスラム国と闘っている国に200億円出すとは宣戦布告で、こっちによこせとなる。
家族にも身代金は払うな無視しろと、行く前から言っています。 死んだ場合でも本人の意思があ
ったんだと。 捕まりずっと狭い所にいると精神状態がおかしくなる。 最初は眠れなかった、新聞
記者になり人生の選択を振り返り、走馬灯をずっと見ている状態。 やれなかった事を悔やんだ。
日本社会の中で紛争地域に行く時は、行くのも勝手で死ぬのも勝手なのが紛争地域取材。 気に
入らない人は自己責任で済まない。 自己責任だからほっとけと言うのはわかるが、行くべきでな
い、政府に迷惑だという考えでは議論にならない。 行っちゃいけないの話はオカシイ。 政府が
身代金を払うとか、何かできる場はない。 他の国は大使館がサポートするが、日本では止めよ
うとする。 日本という国は外国に対し、何もできなくなり小さな国を目指そうとしている。 判断
を全部、行政がやる事が正しいのか。 判断材料を提供するのがジャーナリストが果たす役割。
やりたい事、好きな事をやれるのがイイ社会だと思う。 発表する機会を頂くのは、ありがたい。」